特集災害と闘う

【無料公開】被災地薬局で対応困難な処方を「後方支援」

金沢の「あおぞら薬局」、能登北部の院外処方箋を応需

2024/1/11 21:22

20240111aozora1.jpg
オンライン取材に応じるグランファルマの筒井氏=11日、金沢市の鞍月あおぞら薬局

 能登半島地震を受けて石川県が5日から導入している、被災地病院の院外処方箋を金沢市の「鞍月あおぞら薬局」で応需し、卸が各病院に医薬品を配送するスキームについて、同薬局を運営するグランファルマ(金沢市)が11日、じほうの取材に応じた。能登半島北部は多くの薬局が被災し、営業可能な店舗も機械類が使えず人手不足の状況にあり、このスキームによって「現地で対応が難しい慢性期の薬や長期処方の後方支援が可能になった」と説明。また、同スキームはあくまで医薬品の供給を確保するための「選択肢の一つ」で、1社で独占的に処方箋を応需するものではなく、被災地域の薬局や病院の復旧状況を踏まえて適宜、運用を修正していると話した。

 同社災害対策本部の筒井智子氏が取材に応じた。1日の地震によって、同社の能登北部の3店舗は大きな被害を受けた。町立富来病院付近にある志賀町の店舗は11日現在も開局できていない。能登町の店舗も周辺の建物に倒壊の危険があるとして避難指示が出ており、いつ開局できるか分からない状況だという。

 一方、輪島市の店舗は、建物の被害がそこまで大きくなかったこともあり、1日から営業を継続。しかし、機械類が一切使えず、全て手作業で対応している。地域の基幹病院である市立輪島病院には患者が殺到し、「同店舗のスタッフだけでは対応しきれないことが想定された」と話す。

 同社はこうした状況を受け、病院から処方箋をファクスで金沢市の薬局に送り、同薬局から医薬品を卸が各病院に届けるスキームを県に提案。医薬品供給体制が整うまでの「暫定的な措置」との前提で、能登北部・中部の公立6病院に「選択肢の一つ」として案内し、5日から運用を開始した。

●3病院から400枚以上応需、多くは「慢性期の薬」

 これまで輪島病院、富来病院、宇出津総合病院の院外処方箋の一部を金沢市の店舗で応需。1日100枚以上対応しており、10日には最多400~450枚を応需した。医薬品の発出はまとめて1日1回。最短で翌日の夕方には現地に届いているという。

 処方の多くは慢性期の薬だ。「急性期の薬は現地の薬局や避難所を回っているDMAT、モバイルファーマシーが対応してくれているが、慢性期の薬は種類も多く、被災地で全部取りそろえるのは難しい状況」だとし、同スキームが慢性期の薬の供給に一定の効果を発揮しているとみる。

●被災地域の状況に合わせて運用修正

20240111aozora2.jpg
能登北部の様子(10日撮影)

 被災地域の状況に合わせて、スキームの運用も修正している。営業薬局がある輪島地域では、同社の薬局に処方箋を持参したが、医薬品がなく調剤の対応ができない患者などにのみ同スキームを案内。金沢から届いた医薬品は、薬局で患者に手渡している。志賀町の店舗も来週にも復旧する見通しで、輪島市の店舗と同様の対応に切り替える。

 能登町の宇出津総合病院の近くでは他社の2店舗が営業を再開したものの、それぞれ薬剤師が1人で対応している小規模の薬局であるため、同スキームのニーズはまだ高いとみて運用を継続している。

 筒井氏は「地元の企業として、地域の患者に医薬品をしっかり届けたいという思いでこのスキームを提案した」と説明。1社で独占的に処方箋を応需する形態であると誤解される向きもあるが、他の復旧している薬局の利用を妨げるものではないとし、今後も被災地域の状況を見ながら対応を検討していくと述べた。(持丸 拓也)

〔訂正〕記事公開時、2段落目にあった「志賀町の店舗は町立富来病院付近で唯一の薬局」という記載を削除しました。(2024年1月12日午前10時)

前のページへ戻る

薬局 一覧一覧

特集・連載:災害と闘う一覧

自動検索(類似記事表示)