クオールホールディングスは、能登半島地震でクオール能登町薬局(石川県能登町)が被災したことを受け、指定避難所となっている町立松波中へ仮設薬局を設置している。各地から募った同社の薬剤師3~4人が1チームとなり、4日交代で被災地に入りながら仮設薬局での業務を継続中だ。金沢市に構えた震災対応の拠点で、中心的な役割を担っているクオール中部薬局事業本部中部第一事業部長の河野誠司氏は「松波地区には、薬局がわれわれの店舗しかない。スタッフを退避させたくても、そういうわけにはいかないので、ここは踏ん張らないといけない」と、地域医療の維持に全力で取り組む考えを示す。
海岸近くにあるクオール能登町薬局は、今回の震災で津波の被害も受けた。河野氏によると、津波によって店内は30センチほど床上浸水したものの、松波地区における行方不明者などの人的被害は他の地域に比べて少なかったという。ただ、外部からの支援もその分少なく、震災直後は自らも避難していた店舗近隣の診療所医師が、避難所で住民からの相談を受けるような状況だった。
その医師から「どうにか薬を出せないか」との相談を受け、行政との調整を重ねながら松波中の一室に仮設薬局を設置した。
●仮設薬局へのチーム派遣、多くの薬剤師が「手挙げ」
仮設薬局の営業は、日曜・祝日を除く午前9時~午後3時(土曜のみ正午まで)。午前に処方箋を応需し、午後に薬を交付するといった手順で調剤を行っている。1日に応需する処方箋枚数は平均40枚。多い時には70枚にも上り、それらを3~4人の薬剤師でこなしている。
仮設薬局へのチーム派遣には、多くの同社薬剤師が手挙げしているという。チーム派遣の一連の流れは早朝、金沢市の拠点を出発し、おおむね昼前に現地へ到着。前のチームとの申し送りを行い、4日間仮設薬局で勤務する。その間、チームは車で1時間ほどの距離に確保した宿泊場所から通う。宿泊場所は、徐々に仮設薬局から近い所へ移しており、通勤の負担軽減を図りながら営業時間を延ばしていきたい考えだ。
●施設にとどまる高齢患者の調剤も、限定的ながら一包化に対応
薬の在庫は、医薬品卸が1日1回配送しており、本来の店舗と同等の1200品目以上を確保。外来の調剤だけでなく、施設にとどまっている高齢患者の調剤も担う。店舗の分包機は電源が入らず使えないが、早い段階でユヤマの担当者が駆け付け患者データの移行とともに代替機の貸与が受けられたことから、限定的ながら一包化にも対応できるようになった。
施設からの処方箋を受ける時には、外来の処方箋プラス10~15枚の枚数になるという。河野氏は「医師と連携の下、一包化も本当に必要な患者に限定しながら施設側の理解と協力を得て取り組んでいる」と説明した。
●「災害対策部」の設置が奏功
同社は、災害・パンデミック時における従業員の安全確保や適切な医療提供の継続を目的に「災害対策部」を常設部門として2022年10月に設置。年に4回、全社員を対象とした安否確認訓練などを行っており、今回の震災でも2時間で8割の従業員の安否を確認した。1月2日に本社へ設置した対策本部と災害現場の連絡・調整なども担っている。(藤田 昌吾)