
7月28日に発生した熊本地震を受け、熊本県薬剤師会が福岡、宮崎両県薬の協力を得て、県内3カ所でモバイルファーマシー(MP)を用いた支援活動を開始している。地域の医療機関・薬局の多くが通常の保険診療の体制を取り戻しつつあるため、災害処方箋への対応は限定的。強烈な日差しが降り注ぐ中、医師への同行のほか、熱中症・エコノミークラス症候群の予防啓発、避難所の環境衛生の点検など、幅広に活動を展開している。
熊本県は7月31日にMPの派遣を熊本県薬剤師会に要請。これを受け、熊本県薬は翌8月1日から宇城市の小川防災拠点センターに出動している。2日からは、福岡県薬が八代市の総合体育館、宮崎県薬が氷川町健康センターで活動を続けている。
●記録的な暑さ、MPの温度管理に必死
熊本県薬のMPでは、1日に15枚、2日には16枚の災害処方箋を応需。抗生物質や痛み止め、睡眠薬が多かった。県薬の西竜二郎氏によると、10年前の熊本地震では、1日100枚を超える災害処方箋が発行されることもあった。このため、その規模に対応できるよう急性期で使用する90品目程度に絞り、処方は「原則3日分、長くても1週間分」とするよう申し合わせているという。慢性期の定期処方の薬が不足している患者が来た場合は、近隣で通常診療している医療機関・薬局を案内している。
3日は熊本市内で40度を超す酷暑日を記録するなど、猛烈な暑さの中での支援となった。MPでは温度管理対策も徹底。備え付けのエアコンだけでなく、小型のファンも追加投入。また出入り口の扉は閉じた状態にし、室内が30度を超えないようにしている。西氏は「今回は何よりも暑さが大変。温度管理に気を取られている」と話した。このほか、近隣医療機関の医師による訪問活動にも同行して対応している。
●避難住民の服用状況確認にも着手 福岡県薬

福岡県薬のMPでは、初日の2日に11枚の災害処方箋を応需。このうち8枚は急性期への対応。日曜日で近隣は休診の医療機関が多かったため、3枚は糖尿病や高血圧など慢性期の薬の処方だった。県薬の山口信也常務理事によると、周囲では4日から外来診療を再開する医療機関がさらに増え、災害処方箋の応需が少なくなる可能性が高いため、3日からは避難所で生活する住民への医師の巡回に同行し、薬の飲み忘れなどがないかを確認する活動を開始した。熱中症予防のための経口補水液の配布、避難所の二酸化炭素の濃度測定にも取り組んでいる。
●初出動で「機動性」ブラッシュアップを 宮崎県薬

宮崎県薬のMPは2024年に導入され、今回が被災地への初の出動となる。出動場所は避難所ではないこともあり、現在までに災害処方箋の応需はない。初日となった2日は氷川町内にある避難所4カ所と薬局を訪問し、被災者支援で連携することを確認した。木山允常務理事は、宮崎県薬のMPは全国で最小サイズで機動性に特徴があると説明。「出動する機会がないことが一番だが、今回の初出動で宮崎県薬のMPがどのように機能できるか、実働を通してブラッシュアップしたい」と話した。
MPによる支援活動を統括する熊本県薬の大森眞樹氏は、災害処方箋により、機能している医療機関・薬局の保険診療の体制を崩すことがあってはならないと全関係者が心を砕いていると強調。その上で、今後は薬剤師の職能を発揮し「公衆衛生面」での取り組みが重要な役割になると見通した。また熊本県薬務衛生課の濵田寛尚主幹(薬事班長)は、MPの支援活動が開始したことで「支援体制構築の一つの山を越えた」と述べた。(小泉 壮登)









