能登半島地震で大きな被害を受けた石川県の能登北部地域に、県内外から薬剤師が続々と支援に駆け付けている。派遣された薬剤師が宿泊できる施設を能登中部に確保するなど、石川県薬剤師会が受け入れ環境を整備。日本薬剤師会も都道府県薬剤師会を通じて派遣薬剤師の募集を正式に始めるなど、長期支援の体制が整いつつある。
被害が甚大な能登北部では、被災した現地の薬剤師のほか、県内で比較的被害が小さかった地域の薬剤師や、県外から派遣された薬剤師により支援活動が本格化している。都道府県薬の派遣体制をあらかじめ調べていた日薬は9日、石川県薬の要請を踏まえ、都道府県薬向けに派遣薬剤師を募る文書を発出。「感染制御対策を含めた生活者の健康管理が喫緊の課題として挙げられ、薬剤師による継続的な支援が必要とされている」とし、今後も派遣を続ける考えだ。すでに一部県薬は先行して活動を始めている。
日薬が予定する派遣先は、輪島、珠洲、穴水、能登の2市2町。具体的な派遣先は石川県薬がマッチングする。派遣期間は1チーム3人による5日間を想定し、順次交代していく。想定する活動内容は、▽医療救護所や仮設診療所、モバイルファーマシー(MP)などでの調剤や服薬指導▽医薬品使用に関する医師や看護師らへの情報提供▽医療チームの避難所への巡回診療への同行―など。避難所の衛生管理も担う。
●支援は「必要な場所、量、期間で」
じほうの取材に応じた日薬の山田卓郎常務理事(宮城県薬会長)は石川県薬事務所で、現地でのMPの運用や派遣された薬剤師の調整役を担っている。ニーズにそぐわない支援では「現地に負担がかかる」とし、「必要な場所に、必要な量を、必要な期間支援することが大切」と話す。今後は、被災・復旧状況に応じ、すでに現地で活動している薬剤師たちが構築した支援スキームに応じて、支援していく方針だ。
東日本大震災を経験した山田氏は「当時は『薬剤師は必要なのか』と言われることもあった」と振り返る。しかし、2016年の熊本地震や18年の西日本豪雨など大規模災害での薬剤師やMPの活動を経て、今回の災害支援では必要性の説明を求められることはなく「派遣される医療チームや行政に、薬剤師やMPの必要性、役割は浸透している」と受け止めている。
●能登中部に宿泊地、派遣薬剤師の負担軽減で
被災地支援の課題の一つが、宿泊できる施設がないことだった。そのため、現地入りした薬剤師は車中泊するか、渋滞などによる長時間の移動を想定した上で日帰りするしかなく、薬剤師が疲弊する一因だった。そのため石川県薬は9日までに能登中部にある羽咋市の「国立能登青少年交流の家」を、派遣薬剤師たちが宿泊できる場所として確保。これまで金沢市内のホテルなどから通っていた薬剤師の移動時間が短縮される見通しだ。
石川県薬も、主に県内の薬剤師を対象に能登北部で活動できる薬剤師を募集。1月末までで現地入りできる日程を調べ、調整している。2月以降の日程についても再度、アンケートを募るという。(折口 慎一郎)