特集災害と闘う

【無料公開】能登地震、処方箋なし調剤で混乱

J-HOPが緊急報告会、災害薬事の「情報支援」も重要に

2024/1/16 13:52
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石川県志賀町での避難所巡回支援の報告もあった緊急報告会

 全国薬剤師・在宅療養支援連絡会(J-HOP)は15日夜、能登半島地震で災害支援活動に取り組む薬剤師による緊急報告会をオンラインで開いた。一定条件の下、処方箋を持参できない患者に対する保険調剤を認めた厚生労働省の事務連絡を巡って混乱が起きたことなどが報告され、災害薬事の情報を分かりやすく正確に伝える後方支援の重要性を共有した。

 報告をしたのは、岡山市の金田崇文・J-HOP災害対策委員と金沢市の小林星太・J-HOP北陸ブロック長の2人。薬局薬剤師の金田氏は東日本大震災や西日本豪雨などで災害支援の経験がある一方、診療所薬剤師の小林氏は今回が初めて。2人とも災害関連情報の収集・提供、石川県志賀町の避難所巡回支援などを行っている。

 厚労省は1月2日付で、処方箋を持参できない患者に対し、事後に処方箋が発行されることや医師への処方内容の確認などを条件に、保険調剤を認める事務連絡を出している。

 こうした中、能登地方から被災者が避難し始めていた金沢市内では、医療機関に確認しないまま処方箋なしで調剤する薬局が続出。小林氏は、ニュースで「医師の処方箋なしで薬受け取れるよう通知、厚労省」と報道されたことで、「被災地であれば誰でも自由に処方箋なしで薬を購入できると、患者も薬剤師も勘違いした」とその理由を説明した。

●LINEのオープンチャットが「フル稼働」

 災害薬事の相談で効果を発揮しているのが、LINEのオープンチャット機能。もともと石川県薬剤師会の会員向けに、災害関連情報を一斉送信するツールとしての利用を小林氏が提案した。石川県内の薬剤師なら誰でも入室できる。トークルームの作成が簡単な上、LINEの通常のトークルームと違って入室以前の情報も閲覧でき、入室者の承認・管理ができる利点もあるという。

 オープンチャットは、処方箋なしでの保険調剤や、災害処方箋の取り扱いなどに関する問い合わせがあふれるなど、「フル稼働状態」になった。金田氏は被災地外の薬剤師を「ブレーン」として募り、日常業務の合間を縫って正確な情報を提供。「災害支援は(被災地に)行くか、おカネかだけではなく、被災地外からでもできることが一つの形として実証できた」(金田氏)。

 J-HOPの水八寿裕・災害対策委員は「行政の通知や事務連絡などを解釈するのにかなり苦労した。これをサポートする後方支援は重要」と指摘する。

 今回の緊急報告会は、研修は受講していたものの、災害に対する意識はさほど高くなかったという小林氏が、いざ大災害に直面して慌てる自身の経験を多くの薬剤師に自分事として捉えてもらおうと開催を申し出た。

 報告会の模様は後日、アーカイブ動画を配信する予定(被災地への寄付あり)で、J-HOPのホームページで案内する。

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