特集災害と闘う

【無料公開】処方にタイムラグ、避難所からアクセスできず…

オン資の薬剤情報、被災地で課題指摘も

2024/2/6 04:50

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オン資の「災害時医療情報閲覧機能」の画面。避難所での利用拡大を求める声がある

 お薬手帳や保険証を持たない避難者の診察・調剤で、存在感を示すオンライン資格確認システムの薬剤情報。閲覧に必要なマイナンバーカードの保険証を所持して受診する患者がほぼいないとみられる中、被災地ではマイナカード不要の「災害時医療情報閲覧機能」が頼みの綱となっている。

 一方で課題も見えてきた。とくひさ中央薬局(金沢市)の薬剤師、金谷祐希氏が指摘するのが薬剤情報のタイムラグだ。

 閲覧できる薬剤情報はレセプトベースのため、約1カ月のずれが生じる。例えば、1月1日時点では前年11月請求分までしか閲覧できず、12月に処方の変更・追加があった場合は把握できない。実際、12月に睡眠薬が追加されている患者もいたが、お薬手帳を所持していたため、確認できた。

 電子処方箋ではこうしたタイムラグは生じないが、まだまだ導入した医療機関・薬局が少ないのが実情。金谷氏は「現状では、お薬手帳とオン資の薬剤情報の2つの情報を照らし合わせるのがベスト」と語る。また、院内処方の医療機関の薬剤情報には、薬剤の用法が記載されないため、この点にも改善を求める。

●災害現場からも「アクセス可能に」

 避難所に設置される臨時の診療所や薬局から、薬剤情報にアクセスできないことも課題の一つに挙げられている。現状、アクセスできるのは、オン資に登録済みの医療機関・薬局の端末に限られる。

 1.5次避難所の「いしかわ総合スポーツセンター」(同市)では、臨時診療所の医師への処方依頼に当たり、現地の薬剤師らが避難者の名前や生年月日などを聞き取った上で、協力薬局に薬剤情報の提供を依頼している。金谷氏は「避難所で薬剤情報にアクセスできるとよりスムーズになる」と指摘する。

 避難所でも活動するかがやきクリニック(同市)の薬剤師、小林星太氏は「避難所のほか、DMAT(災害派遣医療チーム)が活動する災害現場でもアクセスできるようになると、薬剤情報の有用性はさらに増すのではないか」と提案する。

 避難所などへのアクセスの拡大について、厚生労働省保険局医療介護連携政策課は「アクセス対象を広げると本来の目的以外に使用されてしまうリスクも高まり、現時点では難しい」としている。(編集委員・笹井貴光)

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