茨城県立こころの医療センター薬剤科の辛島昌秀氏は23日、京都市内で開かれた日本災害医学会総会・学術集会のパネルディスカッションに登壇し、災害派遣精神医療チーム(DPAT)の携行医薬品リスト改訂について講演した。2016年の熊本地震におけるDPAT活動の処方実績を踏まえ、5つのコンセプトでリストを改訂。改定前の128薬品から、改定後は約4割減となる73薬品に絞り込んだと話した。
辛島氏は旧リストについて、使用されない医薬品が多いことや、種類が多いため準備に労力と時間がかかることが課題だったと指摘。「必要最低限のシンプルな医薬品リストに改訂した」と述べた。改訂は18年度の厚生労働科学研究で行った。
医薬品を絞り込むためのコンセプトは、▽精神医療に特化する▽専門外の医薬品はシンプル化する▽災害時の薬剤物流ネットワークが発展しているので、使用頻度・緊急性の低い薬剤はできるだけ絞り込む▽根本治療を行う医療機関へのつなぎに対応できる▽急変時・救命時に対応できる―の5つと紹介。これに加え、室温保存が可能、希釈・遮光が不要、薬剤師の認知度が高い、包装単位が小さい、小児にも使える、服用時に多くの水を要しないといった薬剤も積極的にリストに入れるよう検討した。
DPAT全体班会議でコンセプトを確認した後、作業部会を設置して絞り込みを開始。作成したリストは関連学会から意見を聞き、全体班会議で関係機関からの同意を得た。
辛島氏は絞り込んだ73薬品の一部を例示。抗不安薬と睡眠薬では「依存性や転倒リスクがなるべく低く、作用時間の長い物と短い物をバランスよく入れた」などと説明した。具体的には、抗不安薬ではアルプラゾラム錠0.4mg、クロチアゼパム錠5mg、ジアゼパム錠5mg、ロラゼパム錠0.5mgを紹介。睡眠薬ではエスゾピクロン錠1mg、スボレキサント錠15mg、ニトラゼパム錠5mg、ブロチゾラム口腔内崩壊錠0.25mgを挙げた。
このほか、抗てんかん薬や気分安定薬、抗パーキンソン薬、抗精神病薬、抗うつ薬なども具体的に医薬品名を示した。
●クロザピンなど「処方医が限られる」薬はリスト外
講演後の質疑では、会場から、LAI(持続性注射製剤)、治療抵抗性統合失調症治療薬クロザピン、注意欠陥/多動性障害(AD/HD)治療薬「コンサータ」がなぜ医薬品リストに入っていないのかという質問が出た。
辛島氏は「LAIはすぐに打たなくてもある程度の猶予期間がある。モバイルファーマシーなどを活用しながら対応できる」と説明。クロザピンとコンサータについては「処方医が限られること」を理由に挙げた。