7月末に山形県などで発生した豪雨災害について、全国薬剤師・在宅療養支援連絡会(J-HOP)は8日夜、被災地の薬局・薬剤師の対応を伝える緊急報告会をオンラインで開いた。冠水した薬局の復旧作業と、被災者支援の両立を迫られたほし薬局(山形県新庄市)の星利佳氏らが当時の状況を説明した。
報告したのは、星氏のほか、米沢市立病院(山形県米沢市)薬剤部の赤尾眞氏、あけぼのファーマシーグループ(茨城県常総市)の木村雅彦氏。
「被災者で支援者」と題して講演した星氏によると、7月25日からの大雨で翌日朝には、ほし薬局戸沢店(山形県戸沢村)が腰上の高さまで浸水。その日のうちに水は引いたものの、1階部分は調剤機器や物品が散乱し、薬も使い物にならなくなっていた。近隣からの応援や、社員総出で泥のかき出しや片付けに当たった。
戸沢店の復旧作業の傍ら、星氏らは隣接する新庄市の本店を拠点に、戸沢村内に開設された避難所の被災者支援などに追われた。
薬を飲めていない被災者もおり、「(胃腸内ガス駆除剤の)ジメチコンを“おならが出るから飲まない”という方には、医師から許可を取って一包化から抜いて飲んでもらった」(星氏)という。災害処方箋ではPTPシートなどで薬を渡し、服用状況に応じて改めて一包化をしたことも報告した。
星氏が課題の一つに挙げたのが、全国各地からの支援要請への対応。「いろいろな方から支援の申し出をいただいているが、やる事が多過ぎて対応できない」と語った。現在、村の担当者と調整している。
星氏は今回の大雨災害を振り返り、「山形は雪害以外には災害がこないと思っていて、心構えが不十分だった。正直、人ごとのように感じていた」と打ち明けた。戸沢店は8月7日に仮オープンにこぎ着け、9月2日の本格再開を目指している。全国からの支援のメッセージに励まされたという。
●南海トラフ地震の発生可能性「災害を自分ごとに」
8月8日夕には宮崎県で震度6弱の地震があり、南海トラフ地震の発生可能性が高まったと警戒されている。この日の報告会を主催したJ-HOP災害対策委員会のメンバーの一人で、能登半島地震の支援活動に従事した小林星太氏(金沢市)は、「災害を自分ごととして捉えてほしい」と改めて呼びかけた。
J-HOPはこの日の報告会の模様をオンデマンド配信する予定。