厚生労働省の内山博之医薬産業振興・医療情報審議官は16日の衆院内閣委員会で、1月の能登半島地震を踏まえた大規模災害発生時の医薬品供給の在り方を問われ、「薬剤師会や卸売業者などの協力による今回の事例をよく分析しながら検討する」などと述べた。髙木啓氏(自民)への答弁。
内山氏は能登半島地震が発生した直後から「厚労省、石川県庁、現地の卸業者などが連携し、必要な医薬品を供給できるよう努めた」と説明。現地の医療機関から県庁などに要請があった医薬品は基本的に翌日には現地に届けられる体制を整備したという。また各地から派遣されたモバイルファーマシーが避難所を巡回するなどし「被災地における医薬品の安定的な供給に尽力いただいている」とした。
その上で、「災害発生時に迅速に医薬品を安定供給できる体制の整備は不可欠」と指摘。「薬剤師会や卸売業者などの協力による今回の事例をよく分析しながら、発生直後においても医薬品が迅速に安定的に供給される方策について、不断に検討する」と述べた。
●能登地震で最大73製品が出荷停止
参院災害対策特別委員会でも医薬品の安定供給の在り方が取り上げられた。三浦靖厚生労働大臣政務官によると、能登半島地震により最大73製品が出荷停止、1製品が限定出荷になったという(いずれも1月11日時点、2月15日現在では出荷停止3製品、限定出荷18製品)。質疑に立った芳賀道也氏(国民民主)は南海トラフ地震を見据え、災害時は製造責任者などが他の地域の稼働可能な工場に移り、医薬品の生産を再開する特例措置を設ける必要性を訴えた。
三浦政務官は「医薬品製造では、工場ごとに管理責任者が異なり、各工場においてそれぞれの管理責任者の下で、医薬品の製造方法、設備、原料資材等が適切に管理される必要がある」と説明。「医薬品の製法に詳しい者でも、その者が当該工場の部外者である場合は、医薬品の適正な製造管理等に支障が生じる恐れがあるため、当該工場の設備等の利用は認められない」とした。その上で、東日本大震災では製造所の追加など一部変更の承認手続きを緊急的に実施し、能登半島地震でも相談窓口を設置したというこれまでの取り組みを紹介した。
●GLP-1を調べると「痩せ薬の広告が氾濫」
この日の衆院内閣委員会では、GLP-1受容体作動薬の美容・ダイエットを目的とした適応外使用についても質疑があった。髙木氏は「ネットで検索するとすぐに『痩せ薬として処方する』という広告が氾濫をしている」と指摘。「被災地の避難所だけでなく通常の医療にも支障を来すことになるのではないか」と厚労省の見解をただした。
吉田易範大臣官房審議官は、承認効能以外の目的で使用した場合は医薬品副作用被害救済制度による救済給付を受けられない可能性が「非常に高い」と指摘。「制度等の対象とならないことを明示することを新たに求める検討を行っている」と答弁した。