薬剤師業務のなかでも負担が大きい薬歴入力。営業時間終了後に書き始める薬局も多く、残業の一因となっている。新潟県妙高市にあるアライ調剤薬局では、2024年末に生成AI による薬歴入力支援サービスを導入。AI が服薬指導の音声データをSOAP 形式に自動で生成するため、薬剤師の意識の変化とともに、より患者対応に注力できるようになった。
●服薬指導の音声を解析しSOAPを自動作成
アライ調剤薬局は、近隣のクリニックや広域病院などを中心に、約2,000枚/月の処方箋を応需している地域密着型の薬局である。
「来店する患者様は70 代以上が多く、地域には独居の方も多いので自宅を訪れて丁寧に話を聞くようにしています」と、管理薬剤師の北村聡美氏は地域の特性を説明する。
同薬局の運営元で、新潟県上越市を中心に14 店舗を運営する有限会社ホウライでは2024年12月、対人業務の効率化を図るため、ウィーメックス株式会社の「生成AI 薬歴入力支援サービス」を導入した。
ウィーメックスが2024年9月から提供を開始したこの薬歴入力支援サービスは、服薬指導中の薬剤師と患者の会話音声を電子薬歴システムにつないだ専用マイクで録音し、生成AIが10数秒で解析し、SOAP形式でテキストを自動作成するというもの。薬剤師は生成されたテキスト内容を確認し、必要に応じて修正すれば薬歴を完成させることができる。
●より充実した服薬指導のきっかけに
「患者様の話を聞きながらメモをとっていたので、服薬指導する際に不便さを感じていました。導入後は、しっかり顔を見ながら会話に集中できるようになり、充実した服薬指導を行っています。AI を活用していない薬剤師と比べると、薬歴作成に費やす時間に差が出ているので、働き方改革の意味でも薬剤師全員が使えるようにしていきたい」と北村氏は話す。
また、薬剤師の岩﨑麻衣氏も服薬指導の質が大きく変わってきたと感じている一人だ。
「患者様との会話の中身が薄いとAIが生成するSOAPも薄いものになるので、いかに患者様から話を聞き出すか、ここが重要になってきます。薬歴入力の負担が減ったから楽になるのではなく、いままで以上に患者様からどんな情報を引き出し、何を伝えるべきか強く意識するようになりました」(岩﨑氏)。

●服薬指導に必要ない会話は自動的に削除
AIが生成したSOAPは、薬剤名の誤記など修正が必要な場合があるが、その内容や質については北村氏、岩﨑氏ともに合格点を与えている。
導入する前は「この薬」や「これは」など、薬を示しながら説明していたが、これだとAIが薬の判別がつかないため、導入後は「高血圧の薬」など、より具体的に説明するように意識しているという。また、顔なじみの患者と服薬に関係ない会話をしても、AIがしっかり判別して、こうした内容を省いてテキストを作成する。
「生成AI薬歴入力支援サービス」は、ウィーメックスが提供する電子薬歴システム「PharnesX-MX」と連動することができるが、他社の薬歴システムを利用している場合でもブラウザ版を使うことで利用することができる。
薬局での今後の目標として2人は、在宅医療の強化や地域住民の健康のトータルサポートを挙げる。今後、患者宅や介護施設での活用も想定しているという。
ウィーメックスでは、薬局外でのサービス利用や作成時間の短縮など、利用者の声を反映させるとともに、薬剤師がより対人業務に専念できるよう、今後もアップデートを続け、薬局薬剤師をサポートしていくとしている。
(「調剤と情報」2025年5月号より転載)
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