特集災害と闘う

【無料公開】薬剤師の「貢献の余地大きい」、避難者に安心感

輪島市町野町の避難所で支援薬剤師が活動

2024/1/30 13:00
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NPhA支援チームと、まちの薬局スタッフ。左端が近藤氏、右から2番目が鶴田氏(総合メディカル提供)

 日本保険薬局協会(NPhA)の災害支援薬剤師として、19~23日に石川県輪島市町野町の避難所で活動した総合メディカルの近藤純平氏と鶴田將人氏がじほうの取材に応じ、現地の状況を語った。避難者の中には、「いつも飲んでいる薬がなくても我慢している人がいる」と指摘。薬剤師が声かけして話を聞くことで、「頼っていいんだね」と安心して薬をもらいに仮設薬局に来てくれた避難者もいたという。「話を聞くだけでも力になれる。薬剤師が貢献できる余地は大きい」と話し、今後もNPhAとして支援を継続していくとした。

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輪島市町野町の様子(総合メディカル提供)

 近藤氏と鶴田氏を含めた総合メディカルの3人は、NPhAの支援薬剤師として18日に金沢市に入り、石川県薬剤師会の指示を受けて19日から輪島市町野町で活動を始めた。

 町野町は市中心部から直線距離で約15キロ離れた集落で、地震発生直後は道が寸断されて孤立状態だった。近藤氏らが入った時にはすでに孤立は解消されていたものの、道路環境が悪く、現在(26日時点)でも支援が届きにくい状況が続いているという。

●「薬剤師のフィールドは広い」

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避難所の仮設薬局で活動する近藤氏ら(総合メディカル提供)

 地域唯一の薬局である「まちの薬局」(ハンズファーマシー)は、建物内部が大きな被害を受け、復旧の見通しが立たなくなったため、指定避難所となっている市立東陽中学校の一室に仮設薬局を立ち上げ、7日から営業を再開していた。近藤氏らはこの仮設薬局の支援を主に担当。支援薬剤師が入ったことで、これまで薬剤師1人、事務1人の体制で休みも取れなかった状況が大きく改善された。

 同中学校の体育館には約200人の被災者がいて、地域には他にも15カ所の避難所が点在していた。近藤氏らは避難所を回り、自分たちにできることを探った。避難所では支援物資として送られてきたOTC薬や消毒薬の取り扱いに困っていたため、仮設薬局で管理することにした。避難所の衛生環境に関する相談にも応じ、次亜塩素酸ナトリウムの調製やトイレの衛生管理を行うなど、仮設薬局の運営以外にも「薬剤師が貢献できるフィールドは広い」と近藤氏は感じたという。鶴田氏は炊き出しにも協力し、他の支援者とも積極的にコミュニケーションを取りながら幅広く活動した。

●話を聞くだけでも「力になれる」

 鶴田氏は避難者の話を聞く中で、いつも飲んでいる薬を持たずに逃げてきてずっと飲んでいない人や、毎日飲む薬を2日に1回に減らして我慢している人が少なくないことに気付いた。「薬が足りないと思っていた」「医療者も大変そうだから、我慢しなきゃ」と話す避難者に、我慢しないで薬剤師に相談してほしいと伝えると、「頼っていいんだね」とこわばった表情を和らげ、翌朝には仮設薬局に薬をもらいに来てくれる人もいた。鶴田氏は「薬のことに限らず、話を聞くだけでも被災者の力になれると気付いた」と話す。

 23日には次のNPhAの支援薬剤師チームと交代し、活動を引き継いだ。町野町では徐々に都市部への2次避難が進み、仮設薬局への来局者も減ってきてはいるが、「まだまだ支援は必要」と近藤氏は言う。NPhAとしても県薬などと連携しながら、被災地への派遣を継続していく考えだ。(持丸 拓也)

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