
地域の人口減少や厳しさを増す調剤報酬など、薬局を取り巻く課題が多いなか、経営者はどんな戦略により時代を乗り切ろうとしているのか-。変化に対応し続けることを理念として掲げる東京都八王子市の中山薬局では、調剤業務にかかる負担を減らして、従業員の定着率向上や能力開発につなげようと、新たに自動入庫・ピッキングシステムを導入した。
■人手不足への先手の対策
八王子市に6店舗を構える中山薬局。その1つである北野駅前店には薬剤師9名(社員6名、パート3名)と調剤事務員4名が勤務する。同店では2025年12月、ロボットが自動で入庫・ピッキングを行う「BD Rowa™ Smart 自動入庫払出システム」(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社/以下、日本BD)を導入した。きっかけの1つになったのが調剤事務員の離職。給与に比べて業務量が多いと感じる人が少なくなく、地域の働き手不足もあって、採用に苦労するようになっていた。
「本来、調剤事務員にはレセコン業務を任せたり、医療保険制度を勉強したりしてほしいのに、そこに行く前のピッキングや納品・片付けの段階でつまずいてしまうことが多かった」と、同薬局の代表取締役で薬剤師の中山裕司氏は振り返る。
そこで、今後のさらなる人口減少も見越して、先手を打つかたちで入庫・ピッキングシステムの導入を決意。自ら複数の企業の製品を見て回り、すでに導入している他薬局も見学して、最終的にBD Rowa™ Smart 自動入庫払出システムを選んだ。
■属人的だった薬の管理を改善
「何かを始めるとき、経営者はその意義や理由を繰り返し伝えて理解してもらうことが必要」と中山氏が話すように、導入にあたって心がけたのが周囲への説明。全スタッフへの説明会を開き、日本BDの担当者からも導入メリットなどを説明してもらった結果、率直な疑問や意見が交わされ、これが導入をスムーズなものにした。
面分業の北野駅前店では、約2,700品目の医薬品を扱っているが、BD Rowa™ Smart 自動入庫払出システムはその多くを収納できる。導入後は薬剤を探す時間やデッドストック(不動在庫)の問題が大きく改善されたほか、長時間かかっていた棚卸しも短時間で済むようになった。
「属人的だった医薬品や物品の管理方法を変えたいとずっと思っていたので、誰でも同じように操作できるシステムの存在は貴重でした」(中山氏)。医薬品が1カ所に収納されたため、調剤室の動線も良くなり作業がしやすくなったという。
■スタッフが働き続けたいと思える薬局に
同薬局では、BD Rowa™ Smart 自動入庫払出システムの他にも、6店舗すべてに生成AIを活用した薬歴作成システムを導入するなどDXに積極的だが、中山氏は「人員削減のための機械化・IT化ではない」と強調する。同薬局は、2026年4月に新卒薬剤師2名が入社するなど採用活動に意欲的で、業務効率化のためにDX を進めている。
調剤報酬が薬局にとって年々厳しくなるなか、同薬局が目指すのは変化に対応できる人材育成。定型的な業務にかける時間を減らすことで、薬剤師や調剤事務員の個々の能力を伸ばそうとしている。
「経営者として常に考えているのが、彼らが“ずっとここで働きたい”と思える職場環境をどう実現するか。それが薬局の成長にもつながると思っています」と中山氏は話す。
BD Rowa™ Smart 自動入庫払出システムの導入は、作業時間やヒューマンエラーの大幅な減少という効果をもたらした。現在、2店舗目への導入を検討中で、業務効率化とスタッフの成長、さらに薬局の収益拡大という好循環を生み出すための取り組みを続けたいとしている。
※(「PHARMACY NEWSBREAK 2026年4月 特別編集」より転載)
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