石川県薬剤師会の中森慶滋会長は4日、じほうの取材に応じ、1日に発生した能登半島地震により交通網が寸断され、被災地の半島北部には「医薬品が入ってこない」状態だと話した。県薬は4日、被災地入り。現地の状況を踏まえた上で、今回の災害で薬剤師に求められる取り組みを行政と検討する。
厚生労働省によると、4日午後6時半現在で、石川県内の52薬局が断水や建物損壊などの被害に遭い、うち25薬局が営業できない状態にある。県薬によると、被害が甚大な能登北部医療圏(輪島市、珠洲市、能登町、穴水町)で営業できると確認できた薬局は4店舗のみ。中森会長は「壊滅的。設備は被害を免れても、スタッフやスタッフの家族が被災している薬局は営業できない」と話す。現時点で連絡が取れていない店舗もあるという。
県薬は4日午前、役員3人を能登半島の北端にある珠洲市に日帰りの日程で派遣した。▽実際に被災地にアクセスできるのかどうか▽現地の薬局や医療機関の被害状況▽避難所などで薬剤師に求められていること―などを確かめている。
東京都薬や大阪府薬、福岡県薬など、被災地支援を目的に災害対策本部を設置した都道府県薬剤師会も複数ある。中森会長は「非常にありがたい」としつつ、「今回の災害で薬剤師に何が求められるのか行政と整理した上で、日本薬剤師会を通じてお伝えしたい」と話している。
県薬によると、地震の影響で陸路はほぼ寸断。被災した患者への医薬品供給が課題だ。解決策として、県と卸業者を中心に、能登北部など被害の大きな地域で発行された処方箋を金沢市内の薬局で受け付け、服薬が決まっている医薬品だけでも患者に届けるスキームを準備する動きもあるという。
●情報収集急ぐ薬系団体、JACDSは支援物資用意
日薬など薬系3団体は情報収集を急ぐ。日薬は、被災県や被災県薬の要請があり次第、具体的な支援に動けるように準備。担当常務理事の山田卓郎氏(宮城県薬剤師会長)は「仮に薬剤師やモバイルファーマシーを派遣するにしても、まず近隣県から派遣することになる」とみる。
日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)は、被災地に生活用品やOTC医薬品など支援物資を届けられるように準備を整えた。ただ「現地の受け入れ状況が分からない。無理に持ち込んでもかえって混乱を招く」と、厚労省などの要請を待っている状態だ。日本保険薬局協会は、石川県内の会員企業の店舗に電話で1軒ずつ被害状況を聞き取っている。被災状況を踏まえ、常設の災害対策・社会貢献委員会で支援策を検討するという。
●震災対応「長期化が予想される」武見厚労相
厚労省は4日午後、日薬や日本医師会など医療関係団体を集めた緊急連絡会議を開催。武見敬三厚生労働相は医薬品について、現地の卸協同組合と連携し、公立穴水総合病院、市立輪島病院、柳田温泉病院、公立宇出津総合病院の4病院には供給できていると説明した。その上で「今回の震災は対応の長期化が予想される。避難所、福祉施設への支援の継続が必要になるため、官民連携による現場のニーズに即したきめ細かな対応が重要」などと協力を求めた。(折口 慎一郎)