特集災害と闘う

【無料公開】5社で工場稼働遅延、能登半島地震

参天・アステラス・富山化学・トラストなど

2024/1/9 11:33

 能登半島地震で震度5以上の揺れがあった石川県、富山県、福井県に工場を持つ主な製薬企業10社に日刊薬業が5日取材したところ、5社で稼働日が遅れる影響が出ていた。遅れはないものの、正月返上でメンテナンスを行い当初予定していた稼働日の操業に間に合わせた会社もあった。

 5社のうち、参天製薬は自社点眼剤の7、8割を生産する主力工場の能登工場(石川県宝達志水町)が被災に遭い、一部建物や設備への被害が確認された。年始休暇で被災時に操業は停止しており、5日から稼働する予定だったが詳細を確認するため遅れが出ている。同社は「稼働日は調査の結果次第で判断する」としており稼働再開は未定となっている。ただ、「点眼剤の在庫が数カ月分あるため供給に支障は出ない」としている。

 アステラス製薬も主に免疫抑制剤を製造する富山技術センター(富山市)と抗真菌剤などを製造する高岡工場(富山県高岡市)が5日から操業再開の予定だったが現在も停止している。再開時期は未定で、地震による影響を確認し、復旧作業を進め在庫状況などから優先順位を考慮し再開する予定だ。

 同社は「現時点で、医薬品の供給に直ちに影響を与えるような被害は報告されていない」とコメントした。

 富士フイルム富山化学の富山第一工場と同第二工場(富山市)について、同社は4日から稼働予定だったが現在も稼働停止の状態で「稼働再開の見込みについて現在確認中」としている。

 また旧小林化工の工場を承継したサワイグループホールディングスのトラストファーマテックの3つの工場(福井県あわら市)も一部の建物でひびが入り、棚に置いていた物が落ちるなどの被害があった。

 当初4日の稼働を予定していたが、点検のため稼働は来週以降を予定している。

 また匿名を条件に取材に応じた富山県内の製薬企業は5日から稼働開始の予定が一週間程度遅れる予定だ。地震の揺れで配管にゆがみが生じ水漏れもあったほか、原薬などを貯蔵する自動倉庫にもズレが生じた。発災直後から正月返上で復旧作業にあたっていたが、自動倉庫などの修理を行う業者が正月休みだったため調整作業が遅れている。

 この企業の社員は「地震のあった1日は工員が休みで人的被害が出なかったのは幸いだったが、逆に正月休みで業者を呼べずに苦労している」とため息をついていた。

●富士・辰巳・キョーリンなど5社は予定通り

 また受託製造をメインとする第一薬品工業(富山市)は地震の揺れで工場の配管が若干ズレるなどしたが、正月返上で連日一部社員が出勤しメンテナンスなどを行った結果、予定日の4日午後から稼働を開始したという。

 ダイト(富山市)は予定通り4日に稼働済みで、富士製薬工業の富山工場(富山市)と辰巳化学の松任第一工場(石川県白山市)は予定通り9日に稼働する。キョーリン製薬グループ工場の井波工場(富山県南砺市)も予定通り来週に稼働する予定だ。【日刊薬業】

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